サスペンションの基礎知識1G
前回マシンセッティングのところで省略したサスペンションの1Gという考え方について書いてみたいと思います。
今回はメーカーが想定した標準体重(50kgから70kg)の範囲から大きく外れるライダーがバイクに乗る場合にリアサスの沈み込み(バイクの姿勢)を1G’を測ってセッティングする例からサスペンションの基礎知識を考えてみたいと思います。
たぶんフロントサスも含めもっと細かい認識を持ってセッティングされている方もいると思いますが一般ライダー向けということで話しを進めていきたいと思います。
今回検討するサスの役割はおおきく2つあります。
●ショックアブソーバー(Shock Absorber)
バイクの重量やライダーの体重をささえて走行中の路面の衝撃を吸収すること。
●アンチスクワットアングル(Anti Squat Angle)
走行中バイクの姿勢を安定して保ち安定性や旋回性を確保すること。
メーカー標準セッティングはこの2つの要素が標準体重のライダーが乗ったときにちょうど良くなるように設定されているわけです。
ですから体重の軽いライダーや重いライダーがバイクに乗った場合には当然乗車時のサスの沈み込む量が変わってきますよね。
このリアサスの沈み込む量を標準体重のライダーがバイクに乗った場合と同じくらいになるようにプリロードを調整するとメーカーの意図した本来のフィーリングが発揮されるというわけなんです♪
それでは自分流ですが簡単にセッティングする方法をお伝えします。標準体重のライダーはそのまま乗れますがサスの役割を考えるために読んでみてくださいね。
まず自分のバイクのサスをメーカ標準設定にします。そして標準体重60kg前後のライダーにバイクにまたがってもらいます。誰かにバイクを支えてもらいながら両足をステップに乗せてハンドルを握り実際にバイクに乗っているフォームをとりバイクを直立した状態にします。
もし近くに壁や柱があったらバイクを支えてもらわなくてもまたがったライダーが壁や柱を使ってバイクを支えてもOKですね。この時でも実際にハンドルを握ってなるべく走行している時と同じフォームになるようにして直立でバイクを支えてもらいます。
その状態でリアサスのスプリング長を測ります。1本サスは計りにくいでしょうがなんとか工夫してスプリング長を計ることをお勧めします。
その方があとで調整するのが楽なこととサス屋さんとやりとりするときはこのスプリング長で話しをすることになるのでここで測った記録があとあと役に立つかも知れないからです。
どうしてもできない場合は地面とナンバープレートやシートカウルの長さを測り記録します。このときはタイヤの銘柄とセンターの溝の深さ、空気圧も一緒に記録しておくとよいでしょう。
次に自分がバイクに乗って同じことをします。この値が標準体重のライダーが乗った場合と同じくらいになるようにリアのプリロードを調整するのです。
これだけです。簡単ですね♪ただ1人でできないのが難点ですけどね。
記録はスプリング長で測っておくとこの差がそのままプリロードの差になりますので調整は1回で決まると思います。
ナンバープレートやシートカウルで測った場合はたぶんプリロードに対して1:3から4の比率で変わると思います。
例えば1cm上げたいといった場合はプリロードで3mmくらい締め込むことになるはずです。めんどくさいですが何回か測りながら調整するしかありませんね。
今まで説明したサスの状態は1G’を測って合わせたことになります。このほかにもサスの状態を表すのに似たような呼び方があります。まとめると下記のようになります。
●0G
無負荷状態のときのサスの長さ。純正サスを使っている場合は特に気にすることは無いと思います。他社のサスを取り付ける場合に検討する値です。
●1G
バイクの車体だけを直立させたときのサスの長さ。今回の手順では使いませんでしたが調整のときに記録を取っておくと後で役に立つかもしれません。
●1G’
今回の調整で測った値。ライダーがバイクにまたがって両足をステップに乗せた状態のときのサスの長さ。走行中はこの位置を基準にサスが伸びたり縮んだりするわけです。
ではどうしてリアサスのプリロードが大切なのか?もう少し考えてみましょう。
●ショックアブソーバーに付いて
サスペンションユニットの中で荷重を支える役割をするのはスプリングになります。
このスプリングはスプリングの反発力と支える荷重がうまく釣り合わないと本来の性能が発揮されない性質をもっています。
別の言い方をするとスプリングは適度に縮められた状態がリニアでおいしい特性を発揮するということです。この基準点が1G’と言うわけです。
ライダーの体重によってスプリングが極端に伸びた状態や極端に縮んだ状態ではリニアな特性が得られずにまずいということなんです。
またサスの伸びるマージンと圧縮されるマージンをサスペンションの有効ストロークと言ってこの範囲でスプリングの本来の性能が発揮されるように設計されています。
ですから車高を調整するといった目的で極端にプリロードをいじるとこのバランスが崩れてスプリングのおいし性能が発揮されなくなってしまうわけです。
●アンチスクワットアングルに付いて
アンチスクワットアングルとはぶん田さんのブログにもあるようにスイングアームの角度のことです。
具体的に言うとドライブスプロケットの中心、スイングアーム取付部分、ドリブンスプロケットの中心の3点を結んでできる三角形の形のことになります。
プリロードをいじるとこの三角形の形が変化するのです。
例えばプリロードが不足して車高が下がっている場合はこの三角形が平らになった状態になります。
この状態でアクセルを開けるとスイングアームが車体を押し出す力がバイクの重心を下げる方向に働きます。
この状態は2人乗りをしたときのコーナーリングのようなアンダーステアーになる傾向があります。
逆にプリロードをかけすぎている場合は三角形の頂点が高くなります。この状態でアクセルを開けるとスイングアームが車体を押し出す力がバイクの重心を上げる方向に働きます。
この場合はコーナリング中にスロットルを開けた瞬間に前輪の接地感が無くなるいわゆるプシュアンダーの現象になります。
メーカー標準設定は標準体重のライダーが乗ってこのスイングアームの角度がちょうど良くなるようになっているわけですね。
まぁー純正サスでは極端なプリロード設定をしない限り心配しなくても良いと思いますが・・・。
興味があったらリアサスのプリロードを極端にいじって体験できますので一度経験してみるといった意味で試してみるのも面白いかもしれませんね♪
ここまで理解すると二人乗りツーリングに出かける時などはリアのプリロードをちょっとかけてあげた方が走りやすいという意味が分かってきますよね。
メーカ標準設定は万人向けなので走りを追求するエキスパートライダーはこのアンチスクワットアングルを積極的に調整しています。
このような目的の調整ではプリロードでは限度があるのでリアサスの車高調整で行います。国産車の純正サスで車高調整のできるものはほとんど無いと思いますので高性能サスに交換して行うのが一般的ですね。
例えばぶん田さんのようなエキスパートライダーを見ると車高調整できる高性能サスを使ったりスプリングを交換したり場合によってはスイングアームを特注してスイングアームのの角度を積極的に自分のライディングスタイルに合わせています。
また最近のスーパースポーツバイクのサスはハイスピードコーナリングを前提に標準設定されているそうです。
ぼくは乗ったことが無いのでよく分かりませんが、街乗りをするにはソフト方向のサスセッティングにした方が良いという話しをよく耳にしますね。
バイクの重量が重くなるほどサスの影響力も大きくなりますので小型バイクよりもビックバイクのほうがサスをいじった影響が大きいようです。
ビックバイク乗りのライダーの皆さんはサスペンションセッティングを要チェック!ですね♪
みっちーさんのブログにもあるように理屈がわからなくてもノーマルサスはメーカー標準セッティングを基本としてちょこちょこいじっているうちにフィーリングの違いが分かるようになってくると思います。
サスセッティングって分かっていることがエライとかではなく単純にバイクに乗る幅が広くなり楽しくなるんですよねー。
理屈なんて分からなくてもその日の気分でちょこちょこっといじって「あっ、なんか良くなったー」みたいなノリで全然OKなわけです。
余談ですがどうしてバイクは二輪で倒れることなく走り続けることができるか?なんて理屈が分かってバイクに乗っている人はほとんどいないのですからね。
免許取って好きなバイク買って天気の良い日にバイク乗って「あぁぁーバイクってなんて気持ちいいんだろ・・・」なんて考えるくらいですよね♪ぼくもそうです。
サスペンションセッティングはせっかくある調整機能ですしバイクの気持ち良さをさらに増やせる方法です。
プロライダーでもメーカーの人間でもないのにこんなこと書いちゃって大丈夫かな・・・ちょっと心配ですが・・・だから書けるってのもあるかも知れませんけどね。
オートバイを趣味にしている方の役に立てばいいなと思って書いてみました。
一応自分なりに責任を持って書いていますが不適切な表現がありましたら遠慮無くご指摘お願いします。